
宇宙と軍事のデュアルユース
2027年から航空自衛隊は航空宇宙自衛隊に名前が変わります!という話は、私の講演の中でも出てきますが、今や宇宙と安全保障は切っても切れない関係になっています。もちろん欧米では何年も前から宇宙軍が創設され、日本もその流れに追従しようとしているのは言うまでもありません。
そんな中、技術の共通化(デュアルユース)について少しだけ深堀したいと思います。
現在、様々な技術がデュアルユースされていますが、その代表例として以下が挙げられます。
・GPSはカーナビや地図などに使われているが、軍事的にはロケット誘導などにも使われている
・国際宇宙ステーション(ISS)は、平和の象徴との印象があり研究や観光で使われているが、宇宙兵器の配備拠点となりえる
・軌道上太陽光発電は、持続可能なエネルギーとして期待されているが、無人軍事拠点となりえる 等など
例は限りなく出てきそうです。
これらの背景として、宇宙システムや部品・技術の官民共通化が進んできていることが挙げられます。
米ソの冷戦構造の終了が軍事費の削減となり、安全保障関連技術の民間開放が行われました。その結果、民間能力がアップすることで、技術革新と規制緩和が起こり、高機能・高品質・安価なものが多く民間で開発される流れが生まれたのです。技術畑の方はMILスタンダード(MIL-Std)という言葉を聞いたことがあるかと思いますが、昔は、戦闘機も宇宙機もこのMLI-Stdベースで開発が行われてきました。しかし現在は、企業の技術革新のおかげで、安価でもMIL-Stdレベルの部品やシステムが早くできるようになったため、宇宙用にも安全保障用にも共用で使えるものが多く出てきたのです。
今や人工衛星からは30cmの解像度で物の識別ができ、SpaceX社のStarlinkを使えば、全世界どこからでもインターネットに接続できる時代。もちろん、これらの技術は我々の生活の中でも使われていますが、戦争にも使われているのです。しかし、逆を言えば、良い物を作れば、宇宙用としても安全保障用としても売れるということ。世界中から発注が来る可能性があるのです。